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スティングですやん!
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今まで以上に改まって真顔で話し始める磯山教授。
「大河ドラマ・黄金の日々で呂宋助(ルソン)左衛門と千利休が組んで詐欺を働くシーンがあるのですが、、、?」
しばらく考えていた堀口刑事が急に眼を開く。
「あっ、呂宋助左衛門(納谷助左衛門)がフィリピンの二束三文の壺を日本の諸大名に高く売りつけるシーン」
「そうそう」とうなずく磯山。
「たしか千利休に頼んで値打ちもんやと思わせるんやった」
「千利休がさすがお目が高いと言おうもんなら、各大名たちは争って自ら高い値段を付けたんです。圧巻の競売シーン、まさに映画スティングです」
「あほな大名たちやけど、この詐欺シーンには商品の価値と言うものを考える学びがあると大河ドラマ税理士が言っとりました」
「15世紀の堺での話ですが・・・」と磯山の話は続く。
「その詐欺には黒幕がいました。偽術を操る忍者集団です」
「一子相伝?」
「堀口刑事、えらくこだわりますねえ~、服部翁が気になりますか?」
堀口が頷きながら「服部智造→孝造→鉄也と伝わっているんじゃあ?」
「まあ、それはご想像にお任せしますが・・・」
「その忍者を使っていたのは、、、豊臣秀吉です」
堀口が至極納得した顔で「お金を使わせるだけでなく、豊臣家の財産も増える」と呟く。
「諸国大名が大金を持ち、財政が豊かになると軍事力が増す。それは豊臣家の危機でもあるとお金を使わせました。朝鮮出兵も、褒美に与える領地もなくなり、武士の雇用対策とともに、大名の力をそぎ落とす意味もあったのです」
「この手のスティングが15世紀の堺では頻繁に見られました」
「その一つが・・・」
堀口が磯山が話す前に大きな声を上げる。 「宝くじ!!!」
「忍者は雇われた大名のために色々な土地で嘘を広めたり(偽術)、諜報活動などを行います。その資金は数字が書かれた円盤を回し、矢を当てた数字で当選番号を決める宝くじで賄っていたのです」
「十一世紀ですが那須与一って知ってますか」
「たしか弓矢の名人」
馬上から船の上の的を当てたと…
「雑賀孫一の扇子に日の丸の的と一緒ですやん」
うなずいて磯山は話を続ける。
「最初はそんな技術で投げ銭してもらっていたのです。ところが的を当てる難易度をどんどん増やすうちに大金をせしめる方法として宝くじを考えだしました」
「大勢の人からお金を吸い上げる方法としては最高ですよね」
- (2023-03-31 17:16:17)
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一子相伝か・・・
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磯山教授に連れていかれたのは静岡おでんの店だった。
かつおと青のりが大阪人好みでしょ?
「確かにおいしい!」と微笑む堀口刑事の目は磯山に早くしゃべってくれと要求している。
教授の話は「色々な古文書を見つけて読んでの、あくまで僕の推論です」と言う前置きから始まった。
「忍者の発祥は古代からと考えています・・・」
「古代?」
うなずく磯山。「起源はただの嘘つきです」
「嘘つき?・・・あっ、半村良(はんむらりょう)」
「嘘部シリーズってSFですよね?」
「いいえ」ときっぱり断言する磯山。
「この小説はとっさに嘘が思い浮かぶ普通の工員・浅辺宏一が、嘘によって日本の歴史を裏から操りつづけてきた一族・嘘部の一員となり、諸外国から日本を守る仕事をすることが描かれています。フィクションですが、、、当たっていたんです」
「恐ろしいほど昔から存在していました」」
「たとえばヤマタノオロチ、八つの頭の動物なんているわけはない。歴史学者は八つの部族を支配下に置いたとか、物理学者でもあった寺田寅彦は溶岩流説などを唱えていますが・・・」
「嘘によって時の権力者の力を大きく見せたんです」
「聖徳太子が7人の話を聞き分けたも、豊臣秀吉が貧しい農家の子供だったも、水戸光圀が全国を行脚したも、、、すべてその人たちを輝かせるため、嘘つき忍者が頑張ったんです」
「その嘘の技術は忍術の一種として古文書にあり、偽術と紹介されています」
目を見開いた堀口が「一子相伝ですか?」と尋ねる。
真顔の中にかすかな笑みを浮かべ磯山が「さあ」と答える。
「じゃあ教授、日本だけではないんじゃあ?」
「海が割れたとか、水の上を歩いたとか、目が見えるようになったとか、世界的に嘘の技術集団はいたようです。とくに宗教関係は現在でも…サイババとかね」- (2023-03-30 11:28:09)
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そうか、納谷って、、、
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夜中にもかかわらず堀口刑事は自分の車で静岡に向かった。いてもたってもいられねかったのだ。
早朝、富士経済大学の正門前で駐車し磯山教授を待った。
いつも早くに大学に出勤する磯山はすぐにやって来た。
正門前で声をかける堀口。
「先生、納谷って?」
「まあ、コーヒーでも」
研究室で教授自らコーヒーを入れてもらった堀口は、開口一番大きな声で話し始める。
「国立テクノの納谷って研究者が半導体の研究で賞をもらってますわ」
微笑みを浮かべて答える磯山。
「呂宋助左衛門(るそんすけざえもん)って知ってますか?」
「え~っと、たしか、堺のごっつお金持った商人」思い出しながら答える堀口。
「よく知ってますね」
「知り合いの税理士に大河ドラマ大好きな人がいまして、大河ドラマ税理士って呼ばれてて、一度講演会に招待されたんです」
笑顔で「黄金の日々ですね」と答える磯山。
「フィリピンの二束三文のツボを各大名にめっちゃ高く売った詐欺師」と刑事らしく答える堀口。
「その詐欺師の名前が納谷です」
磯山は堀口の目に輝きが増すのを見逃さなかった。
「刑事さんの推理を教えてください」
うなずいて語り始める堀口。
「江戸時代に禁止された宝くじが、現在の形になって現れるのが昭和20年」
「なぜ?」と尋ねる磯山。
「戦費調達のためで、当たり発表時には敗戦していて負け札なんて呼ばれてしもた」
吹っ切れたように堀口が呟く。
「宝くじを作った動機は国家の裏金造りや」
微笑みを浮かべるだけの磯山に語り掛けるように話し始める。
「ルーレット、回る数字はあたりの番号を特定できるため」
「電動風車型抽選器作ったんは国や自衛隊と関係が深い国立グループや」
「現在の技術があれば、女の子がボウガン発射のボタンを押しても特定の数字に矢を打ち込むのは簡単や」
「その番号の当たり賞金は裏金や」
「そのためにかなり治安がいいにもかかわらず、高額当選者は黙っとけと国を挙げて推奨してる」
「その日から読む本ちゅう冊子まで発行してな」
微笑みが消えた顔で磯山が呟く・・・
「刑事さん、晩御飯ご一緒できます?」
真顔で答える堀口・・・
「今日は休みとってますから、、、と、言うより捜査さぼってでも」
PS:言っときますけど僕のただの空想ですよ! (だのにまだ続くんかい)- (2023-03-28 11:27:08)
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まだ続いてるんや、ルーレット。
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3月4日「チョコにへんなもの入れないで」以来、僕が宝くじに抱いている妙な妄想をもとにした映画のストーリーを、はた迷惑にもかかわらづ発表しています。
ようやく堀口刑事にも大掛かりな陰謀が見えてきました。
「回る数字に矢を放つって、いつまで時代遅れのやり方やってんねん」
「それをやるにはなんかメリットあるはずや」
「始めた動機は戦費調達やしなあ~」
「昭和20年の負け札からやなルーレットの登場は・・・?」
「電動風車型抽選器ちゅうんか、、、ややこしな」
堀口は「メーカーなんぼ探してもあらへんわ!」と毒づいてネットカフェを後にする。警戒心がなくなったというより、面倒くさくなってスマホや自宅のタブレットで検索しまくる。
まずは伊賀忍者の末裔の名前を調べ始める。
「伊賀忍者を取り仕切った3人(上忍)が服部半蔵、百地三太夫、藤林長門守」
「服部、百地、藤林、おや清原もか?」
「望月は甲賀忍者か!」
「和歌山の鉄砲隊ともかかわってるから雑賀もやな」
百地製作所、服部電子機器、藤林金属工業・・・
しかしいくら調べてもそれらしい会社はなかった。そもそも忍者の末裔が自分の名前を使った会社で電動風車型抽選器を作っているかどうかも怪しいはずで、日本全国の機械製作所から探し出すなんて不可能だ。
音を上げた堀口は磯山教授にメールする。
返信は・・・
「納屋」 たった一言?
また調べ始める堀口・・・
「納谷製作所…金属加工か…う~ん違うか、、、あれ?」
「なんで、国立(くにたち)テクノロジーズが出てくるねん?」
「あ、納谷ちゅう技術者が文部科学大臣賞とってるわ、半導体重層回路パターンの計測装置?なんやそれ、さっぱりわからん」
「国立グループ言うたら、原発も作ってるし、日本政府や自衛隊とも関係深いわ」
- (2023-03-27 15:42:25)
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天保の改革いらい発売されとらん!
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とある考えがひらめいた堀口刑事はそそくさと大阪府警に戻る。
警察や自宅のパソコン、携帯では履歴が残るため、、、ネットカフェを訪れる。
そこで宝くじの抽選方法の移り変わりを調べた。
日本最初と言われているのが大阪府箕面市の瀧安寺で行われていた富会(とみえ)です。(寛永元年1624年)
お正月に参詣した人が、自分の名前を書いた木札を唐びつの中に入れ、7日の日に寺僧がキリで3回突き、3人の当選者を選び出すというものです。
福運のお守りが当たりでした。
「ドリームジャンボに比べるとショボい賞品だなあ~」と独り言をつぶやきながらパソコンに向かう堀口。
「ショボいのに盛況やん」
「そうやんな~、いまだにあんな回る数字に矢を射るだけっておかしいよなあ~?」
「吉本の芸人に障害物競走させるとか???」
「巨大パチンコ台作るとか?…もっとエンタテイメント性高めんと」
「抽選会だけで高視聴率の番組が製作できるよな?」
「そもそも、なんで富会(とみえ)が作られたんやろ?」
「ほ~う、お寺の改修費を作るためか?」
「ところがどんどん金銭と結びついていきますって、、、今も昔もやな」
「やがて富くじとして町で乱発されるようになります、、、今も昔もやな」
「徳川幕府は、元禄5年(1692年)禁令を出すって、なるほどな~」
「そんでも自社の修復費調達の手段としてだけ認めたんや、ふ~ん」
「これが天下御免の富くじ“御免富(ごめんとみ)”ちゅうやつか」
「御免富も、天保の改革(天保13年・1842年)によって禁止されんや」
「明治になっても明治元年(1868年)の太政官布告によって禁止かいな」
「結局、天保の禁令以来103年間も、日本で富くじは発売されへんかったんや」
「ほな今の形の宝くじに変わったんは・・・」と呟き、堀口はドリンクバーからホットコーヒーを持ってきて、一口グビリと飲むとまたパソコンに向かう。
「・・・なになに、昭和20年7月、政府は軍事費の調達をはかるため、1枚10円で1等10万円が当たる富くじ(勝札・かちふだ)」を発売しました。ところが抽せん日を迎える前に敗戦が決定(負札・まけふだ)と呼ばれるようになってしまいました・・・なんやそれ」
「こっからやな、回る数字に矢を放つようになるん」
堀口の想いは徐々に確信に変わってきた。
- (2023-03-25 16:07:24)
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